FEATURE

どんな紙を求められても漉ける

越前和紙の魅力を教えてください。

Sさん

いろんな紙をつくれるところが魅力かな。

越前には紙をつくる職人も多いけど、紙をすくための道具を作る職人さんも多くいるんです。
昔から越前は和紙の生産量が多くて、原料の調達もたくさんできます。
そうやって調達された原料で、職人さんがつくった道具で紙漉き職人が時代に合った紙を漉く。

原料から道具、紙漉きまでが産地内に揃っているので、ご要望にあった和紙をご提供できる。
そこが越前和紙のいいところですかね。

Yさん

お客様から「こんな紙が欲しい」と言われたときに、この紙はどこ(の和紙工房)が得意やなと紹介してあげられる。
うち(Yさんの工房)でできる事は何とかやってみよう、と思える。
どんな紙を求められても、みんなのところで漉けるというところが越前和紙の魅力だと思います。

Sさん

和紙の「伝統工芸士」は全国に60人ほどいるんですが、その半分は福井県にいるんですよ。
実はYさんも伝統工芸士のお一人で。

「全国手漉き和紙連合会」の事務局も福井にあります。
それだけ人手もあるし、和紙の組合もしっかりしています。
つくっている紙の種類も原料も大きさも多種多様。
機械漉きだって越前でしている
1枚~何百・何千のロットにも対応できますし、越前に頼めば何でもできますよ!

製品には太すぎる繊維を取り除いています

1960×1050 サイズの大きな和紙(襖紙サイズ)もお手のもの

和空間にも洋空間にもマッチ

最近は海外でも人気が出ていますよね?

Sさん

そうですね。最近もミラノで展示会がありました。
今海外で越前和紙が広まっているのは「天然素材」が注目されている時代背景も理由の一つ。

もう一つの理由として、和紙は畳や障子の和空間だけでなく、ホテルやレストランなどの洋空間にもマッチします。
空間を柔らかい印象にできるため、海外でも人気が出ているんじゃないかな。

越柊 ミラノ展示会
越柊 ミラノ展示会

ミラノ展示会の実際のご様子

伝統工芸品を使うことで広げてほしい

今後越前和紙に期待することは?

Yさん

「伝統産業=守り」の印象があるんです。
『伝統工芸品って良いよね』で終わらずに、使ってほしい、広げていってほしい
そうすることで産業が成り立ちます。
和紙の製品と聞くと「珍しい」という印象を持つ人が多いんじゃないかな。
まずは福井のどこにでも和紙が置いてあるようになってほしいですね。

越柊が和紙を知るきっかけになってくれたら私たちも嬉しいです。

(株)福井銀行様 にご採用頂いた越柊(RAIN×4)

おまけ~インタビュアーから見た越前和紙の凄さ~

何百年・何千年たっても復元される越前和紙

Sさんとお話をする中で、「水素結合からなる和紙の強さ」というとても興味深いお話を伺いました。

「紙の中には繊維が無数にあって、水が蒸発し最終的に紙には水素だけが残ります。
残った水素が結合することで、越前和紙はちょっと引っ張ったりしても破けない、多少形が変わってもそこで新たに水素結合が起こる。
そうして越前和紙は何百年・何千年たっても復元ができるんですよ。」

今つくられている和紙が何百・何千年後でも変わらずに想いを伝え続けていけるものだと考えると、壮大なロマンを感じますよね。

お客様の要望によって変わる和紙原料の割合

Yさんとのお話の中で、「お客様が和紙に強度を求めるのか、柄がしっかり見えてほしいかなど、要望によって原料の割合が変わる」とお聞きし、とても驚きました。
植物原料の割合はお菓子のようにg(グラム)で量っているわけではなく、手の感覚で調整するのだそう。

その他にも、柄の要望をお客様からお聞きした際に、(手の動かし方や使用する道具など)こうすれば求められた柄ができるな、と瞬時に思いつくそうです。

「長年の積み重ね」から生まれる職人技をお話の節々で感じました。